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2026年8月26日
スマートフォン(iPhone)搭載のAIに「世界最古の裁判は何?」と尋ねたところ、「よく取り上げられるのは、ギリシャ神話における海神ポセイドンが軍神アレースを訴え、アレースの丘で神々が裁いたもの」と回答してきた。神話の時代の話である。また、続いて「日本最古の裁判は?」と尋ねたところ、「盟神探湯(くかたち、くかだち、くがたち)」と答え、ウィキペディアに飛んだ。ウィキペディアによれば、「盟神探湯」とは古代に行われていた「神明裁判」のこと、とある。熱湯の中に入れた石を取らせるなどして、入れた手の予後で正邪を判断したという何とも恐ろしい裁判だったらしい。いずれにしても、“正邪は神のみぞ知る”といった色合いの濃いものであったと言えよう。
この様に、洋の東西を問わず、古くから犯罪や争い事は絶えないものらしく、神話の時代にさえ早くも“裁き”が登場している。古代から時を経て、時代と共に食糧事情が良くなり衛生観念も発達すると、それに伴って人口が増え、貧富の格差も顕著になって来る。すると、犯罪や争い事は増加の一途を辿ることになる。そうした増加してゆくもめ事に対応するために、日本では、江戸時代になると奉行所なるものを設置して、これに対応していたことは歴史の授業で学んだ。「大岡裁き」などと言われて、映画やドラマなどで名奉行として描かれる南町奉行大岡越前は、その最たるものだろう。
その大岡越前のドラマの様に、法に照らし合わせて公正な裁きをしてくれると思うから、言い換えれば法の秩序に守られていると信じているからこそ、民は安心して、「恐れながら」と裁判所に訴える。それは、法という概念が浸透・定着して以降、今も昔も変わらない。昔は、為政者の意を汲んで裁きが左右される事も多々あったと思うが、三権分立が叫ばれて世界的に浸透している現代に於いては、そうした忖度裁判は独裁国家以外ほとんど見られないだろう、と思っている。ところがこの方は、自分の意に沿わない裁判官に罰を与えたというのだから恐れ入る。米国のトランプ大統領だ。
20日の北陸中日新聞朝刊(以下、新聞)の1面に、「米、ICC赤根所長に制裁」の文字が大きく載った。トランプ政権が、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長ら2人に制裁を科す、と発表した記事だ。ICC加盟国ではない米国の主権を侵害したとして、既にICCの裁判官と検察官11人を制裁対象としていたとされるが、同盟国出身の国際機関トップまで制裁の対象とするのは極めて異例な事らしい。まあ、トランプ氏に関しては、やる事なす事異例づくめだから、異例に対する驚きよりも「またやらかしたのか!」の感が強い。
それにしても、自分の意に沿わなければ、法の番人にさえ制裁(新聞によれば、家族も含め、米国への入国禁止や米国系金融機関との取引禁止の措置が取られる)を加えてしまうとは、独裁国家と何ら変わらない愚挙だ。しかも、経済力も軍事力も世界で一番の国のトップだけに、尚更始末が悪い。やがて2年になろうとしているが、トランプ大統領就任以降の世界は、完全に彼の予見不可能な言動に振り回されている。ベネズエラやイランへの躊躇ない軍事作戦を見せられて、どの国の指導者も彼の蛮行や愚挙を止められないでいるのが現状だ。明らかに、力による支配を見せつけようとしている。アレースの丘で判決を下した神様でもあるまいに、『何様のつもり?』と問い詰めてやりたい。
ICCは、2002年に設立された、意外と新しい常設の国際機関だ。国際連合広報センター(https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/50307/)には、「ICCは戦争犯罪や人道に対する罪で個人を訴追できる刑事裁判所です」と書かれている。この趣旨からすると、既にICCから逮捕状が出されているプーチン大統領やネタニヤフ首相に加え、突然ベネズエラに軍事作戦を敢行したりイランを攻撃したりしたトランプ大統領も訴追されてしかるべきではないか、と考える為政者も出てくる可能性がある。そんな懸念が頭をよぎったのか、それとも自分の国はICC加盟国でないという安心感からか、米国の兵士を訴追するとは何事かとの怒りもあって、法の秩序に真っ向挑戦する愚挙に出た。憂慮すべき事態だ。
ICCへの最大の資金拠出国である日本は声を大にしてトランプ大統領を非難すべきだが、その声はどこか遠慮がちだ。しかし、米国の制裁によって、日本の金融機関やクレジット会社も取引を制限して利用できなくなる恐れがあるというから、実は結構深刻だ。“家族も”となれば、自国での生活もおぼつかなくなる可能性すらある。ただ、正義に反するとばかりに取引を制限しなかった場合には、恐らく何らかの制裁が科せられるのだろう。国内外の金融機関などは、苦しい選択を迫られるに違いない。
でも、法の秩序を守るのは、最優先課題の筈だ。国連加盟193カ国・地域のうち米国、ロシア、中国、インド、ウクライナ、イスラエルなどを除く125カ国・地域が、ICCに加盟している。見て分かるように、非加盟国には大国や紛争を抱えている国が多い。そして、イスラエルのネタニヤフ首相は、今回の制裁に賛同の意を表明している。同じように、紛争を抱える非加盟国や地域にとっては、ICCを弱体化させる、或いは解体させる絶好のチャンス、と踏んでいるのではあるまいか。そうさせないためにも、加盟国の強力な反対活動が必要だ。負けるなICC!
【文責:知取気亭主人】
シロタエギク
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